ある日私はがん患者となった #2

ある日私はがん患者となった #2

1】ある日突然人生にやってきた「がん」という病

※2012年4月12日からの私の治療の流れです※

初めてのPET検査が保険適用

4月16日 

PET検査、これまた名前は知っているが人間ドックのイメージが強く、健診ではく検査なので保険適用になる、という事を考えたことがなかったので、精算の際、改めて自分はがんなのだなと思った記憶。

総合病院でPET検査

腫瘍に目印をつけるため、放射性薬剤を薬を点滴、その後個室へと案内される。

動かす部位に検査薬に含まれているブドウ糖が集まるので、正確に検査するため、1時間ほどそこで、検査薬が体内にめぐるのを待ち、検査をうけるの。

可愛らしい壁紙とふかふかのリクライニングチェア。雰囲気は産院のようなかわいらしさ、うん、健診向けかな。がん拠点病院は病院の一施設で、可愛い要素はないな。

結果、腫瘍はPET検査では写らなかった。

4月17日 

悪性の腫瘍が腹腔内にあるのは事実。

その日にがん拠点病院、2箇所を選択し初診予約をした。

婦人科のクリニックに行っていなかったら…、卵巣のう腫の手術を選んでいなかったら、全く体内の異変に気づいていないであろう、無数にお腹に散らばったがん細胞たち、怖いな、そっと腹部を撫でた。

4月19日

紹介状と検体等のセットを取りに行く。

1週間前の私は未だ癌患者じゃなかったけれど、今は名前を知っているがん専門も病院を紹介状を受け取っている現実。自分の出来事だけど、自分じゃないような、信じられないという言葉がくるくる回る。

2】中皮腫というがんの切除がなぜ難しいのか

悪性腹膜中皮腫は腹膜を覆う中皮に癌が発生します。

臓器や組織などで塊をつくる癌との違い

例)肺がんと肺の胸膜にできる癌の違い

  • 臓器に発生した腫瘍を部分的に取り除くことも可能
  • 転移等がなく手術で取り切れれば経過観察となる
  • がんの種類により、○年再発が見られない場合「寛解

中皮腫はミカンに例えるとわかりやすい

果物のミカンを思い浮かべてみてください。

についてミカンで例えて簡単にご説明しますと、

  • 肺癌はミカン(人間)の皮を剥いた、房(臓器)の中の一房(肺)である実の中に出来る癌
  • ミカンの実の薄皮の部分(胸膜)にできるのが中皮腫という癌
  • 薄皮(胸膜)を剥がす。もしくは実(肺)薄皮(胸膜)ごととる手術は可能。(片肺のみ)

心膜(心臓)や、腹膜(腹部)にできる場合

  • 心膜や腹膜の場合、実ごと取れる臓器は絶望的に無い。心臓を実ごと取ったら死んでしまう。
  • 発生した腫瘍の場所が私の場合は腹膜なので「悪性腹膜中皮腫」

さらに、腫瘍の組織にも種類があります。

  • 上皮型
  • 肉腫型、
  • 線維形成型
  • 上皮型と肉腫型が混在する二相型(混合型)

この四種類があります。

3】いよいよがん拠点病院を受診

がん拠点病院① 初診・婦人科

5月8日

腹腔内の映像写真と標本だけでは判断が難しい、一度中央鑑定(中皮腫を再検査する)検査に出すという話が出た。

中皮腫の診断は難しいとは聞いていたが、プレパラートの細胞があるから再鑑定は予想していなかった。

のっけから厳しいな、中皮腫、お腹のがん細胞がこうしている間にも増えている様な気がして冷や汗が出る。できれば早く手術してとってほしい。

腹膜中皮腫に使える抗がん剤の種類

中皮腫だった場合、可能性があれば摘出しますが、鑑定をまち婦人科の空きが出るのに最短で、半年から9ヶ月ほど待つ可能性が高い。

予想していなかった答えだった。無症状でたまたま見つかったから早く摘出しましょう的な運びになるとばっかり思っていた。

検索して知ってはいたけど厳しい現実

  • 投薬治療をはじめながら鑑定結果を待つ
  • 腹膜がんと同様の治療になる
  • 腹膜がんとしても厳しい奏功率
  • 腹膜中皮腫はエビデンスがほぼない
  • よって効果がどの程度と数字では伝えられない
  • しかし何もしなければ、確実に進行
  • 早ければ3ヶ月大人しく待つ状況ではない

がん拠点病院② 初診・婦人科

病院で手術をしましょうという回答

5月23日 

  • すぐに手術
  • 鑑定は術後でいい
  • 大きくなる前に切ろう
  • ①病院の診断を待つ間に腫瘍が大きくなるより絶対にいい

そうテキパキと手術をねじ込む先生、こちらはこちらで急展開で驚いた。

2012年腹膜中皮腫の患者が少なく、①病院は慎重に、②病院は手術、という判断の違いであるがどちらが良いとも言えない、と。

選び決めるのは先生ではなく、私。これもまたがん患者となって知った事。がん患者となってから、選択する事=命を左右する。そして個体差があるから「絶対」は存在しないという事を痛いほど噛み締めることになる。

検査でうつらない腫瘍があるのがわかって、しかも手術できる体力がある。可能性があるのはすごく恵まれてる、この言葉は私の心に深く刺さった。

4】腹膜中皮腫、開腹手術

人生初の開腹手術

6月12日 

  • 子宮・卵管・ダグラスこう摘出
  • 見える範囲の腫瘍は電気メスで焼き切った
  • 横隔膜に何箇所か腫瘍を手で確認
  • 横隔膜の腫瘍は抗がん剤で潰すと判断
  • QOLに問題が起きるので閉じた

これが開腹し実際腫瘍を目で見た結果である。

手術をしたが全て取り切れていない

  • 腹膜は剥がしていない
  • 膜の表面上の目に見えた腫瘍のみを切除
  • 腫瘍が集積していた臓器を腫瘍ごと摘出

横隔膜の腫瘍はQOLを優先し閉じた

  • 場合によっては骨を外す大掛かりなものになる
  • 術後の回復、呼吸障害等、を考え残して閉じた

状態的には「進行中」のがん患者

私は胃などの臓器に発生した固形癌ではないので、「取り除いた」事にはならず、今後どのように体が変化していくのかわかりませんが、胸膜中皮腫になる可能性も十分考えられる、横隔膜に残っている腫瘍

5】手術できても厳しい5年生存率

胸膜中皮腫で、Ⅰ期 14%、Ⅲ期 8パーセント、Ⅳ期 0%となかなか厳しい。

さらに中皮腫の中でも「腹膜」は年間800人いるかしら?みたいなレア度である故に「エビデンス」がない。

1度目は腹腔鏡術、2度目は開腹術

人生になにが起きるか本当にわからない、40年生きていましたから、わかっていたつもりでした。

しかし、生理の時のほんの少しの違和感から、卵巣嚢腫と診断され、そして中皮腫という希少がん患者になるまで僅か1ヶ月という急展開。

しかもその一っヶ月間に腹腔鏡手術を受けているのです。

本当にまさか私が?という気持ちで心が埋め尽くされ、頭に浮かんだのは、あぁ、私は5年生存率を見る限り予後の悪い、珍し癌患者になっちゃったんだ、でした。

6】でもね、前を向く以外方法はないわけで

入院に対しても、手術が出来る事をありがたいと前向きうめ止めよう。

そしてなるべくおしゃれ心を忘れずに、自分のテンションが上がるもの、そして便利なものを探して快適さも手に入れるんだ。

今はね、がん患者だっておしゃれができる時代。

癌を経験されたアパレルのデザイナーさんが、ケア用品や介護用品という実用性を兼ねながらもデザイン性のあるものを作っている時代だったりするのです(嬉しい)。

車椅子のスカートや、可愛いパジャマ♪今後お世話になるかもしれないステッキも、次の治療に入った時、おしゃれを諦めないでも大丈夫、それだってちょっと前向きなプラスの気持ちになれるんじゃないかな。

ある日突然がん患者となった私の決意

自分に身に起きたことはしょうがない、それは9年目を生きているから言えること。

2012年の私には少なくともそんな余裕は全くなかった。あるのは私の恐怖、希少がんという治療の難しいがんに罹患したショック。

誰かにすがりたい、でも話そうと思う相手は癌患者ではない。言ったってわかってもらえない。その気持ちが大きかった。温度差をストレスと私が感じるのなら、一人で先を選んで進もう、そう決意する。あの頃は心が頑なでした。

手術が終わっても、治療を決めなくてはいけない現実。

がん患者となったとたん、人生がガラリと変わり、情報得て病気について知り、選択肢を増やそうと思えば種類は増えてしまうがん治療。

とにかく手術は終えた。それが大きな意味で、初めてがん患者となった私の大きな進展だった。

by中皮腫患者mochi